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わたしたちの主張
平成22年3月15日

 明細書の無料発行の義務化に物申す


 レセプトオンラインの義務化を撤回させることが出来た矢先(ただし、レセコンを使用している診療所は原則的に今年の七月からの施行になるが、手書き請求の診療所は今まで通り手書きで可)、今度の改定でまたもや、やっかいな事が義務化されました。

 それは、「明細書付き領収書」発行の義務化です。中医協のなかの「保険者、被保険者を代表する委員」七名の中の勝村久司氏(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)が、五年前中医協委員になったときから「患者の視点を重視するには、中医協で決めた診療報酬の点数に対して、患者が良し悪しを言えることが大事だ」との持論で、全患者への無料発行を主張してきたのが今度の改定で義務化されたわけですが、実に多くの問題点を含んでいます。すでにほとんど全ての医療機関で診療明細付きの領収書を出しているわけで、たとえば、胃カメラと胃薬の処方を受けた場合下記のようになり、煩雑すぎて患者さんにとって為になるとは考えられません。せめて「義務化」ではなく「希望者へ」とすべきだし、また患者さんに説明する時間も新たに必要になります。レセコン導入のコストで三百万円前後はかかったわけだから「無料」は無いだろう。

(某クリニックでの場合)
再診料  1210円
医学管理料 2250円
処方せん料 1330円
投薬検査料 15060円 
病理診断料 10260円
合計 30110円 
(3割負担)領収額9030円

だったのが、
   
再診料  710円
夜間早朝加算 500円
胃内視鏡検査 11400円
ガスコンドロップ内服液2% 5ml、ブスコパン注20mg2%1ml 1管、プロナーゼMS 20000単位 20000単位、キシロカイン液「4%」2ml、キシロカインゼリー2%5ml、ボスミン注0.1%1ml 1管
計560円
病理判断料    1460円
病理組織標本作製(院外)病理組織標本作製(1臓器) 8800円
内視鏡下生検法  3100円
特定疾患療養管理料(診療所) 2250円
内服薬処方せん料 680円
処方せん料長期投薬特定疾患処方管理加算 650円
合計 30110円 
(3割負担)領収額9030円

 また、この明細書は県レベルでの査定と保険者レベルでの査定を経て最終的に確定するわけだから、窓口での発行はあくまで「未確定」の明細書であるわけです。義務化されると、患者さんは確定したものと考えるので、保険者からの「医療費通知」と突き合わせて、しばしば違っている事があるために疑心暗鬼になり、訴訟問題が多発する可能性があります。当然訴えられるべきは査定した保険者や県であるべきです。
 これらの疑問点を払拭するために「明細書の発行の義務化」を廃止して「健保組合が希望者に確定レセプトの明細を渡す」ことにすれば良いことです。

 勝村久司氏が属する連合も、「ここ十年間ベースアップどころか定昇もなかった医療業界」の実態をちょっとは理解してから中医協に委員を送るべきです。単に現場を混乱させ、医師と患者の関係を気まずくするだけの改定であり、撤回に向けて団結していきましょう。

 (顧問 野田 芳隆)

 

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