HOME » 協会新聞 » 200912医療費の総枠拡大を

バックナンバー

 

わたしたちの主張
平成21年12月15日

 診療報酬改定は医療費の総枠拡大を

政権交代から三ヶ月が経った。

先月、政府は行政刷新会議の事業仕分けで歳出の徹底した見直しを行ったが、各省庁の官僚に反論の隙さえ与えぬ「仕分け人」ペースの作業の様子は、まるで公開裁判だった。

九日間という短期間で四百四十七事業を精査しなければならない事情はあるにせよ、特に医療や保育、科学・技術の基礎研究などに対する議論は乱暴で、次々と見直しや予算削減の判定が下された。診療報酬についても、「開業医が相対的に高収入」「一部の診療科が高収入」など正確な実態を把握しない指摘があり、配分見直しを求めることが決定された。

一方、厚生労働省の専門部会の一つである社会保障審議会医療保険部会では、診療報酬配分の見直しが進められた。この部会でも、医療費の総枠拡大を議論するのではなく、現在の医療費総枠の中で診療報酬配分を見直す方向で、「選択」「集中」という言葉が使われたようだ。

診療報酬改定の度に、医療現場にそぐわない新しい項目が「配分」される。それには、施設基準というハードルがあり、その高さも行政側の裁量によりまちまちである。

過去、歯科の診療報酬改定で、初診料とは別に「かかりつけ歯科医初診料」というものがあった。これは、医科の初診料と同じ点数にするため「配分」されたものであったが、もともと算定要件のハードルを高く設定していたものが政治力により算定用件を緩和した結果、算定頻度が上がり、結果的に社会問題となって廃止。その後、初診料自体も減額されることとなった。

現在の医療崩壊を救うには、最低でも過去四回の診療報酬マイナス分を補填する引き上げが必要である。診療報酬配分の見直し程度では、この医療崩壊は乗り越えられない。特に歯科経営は危機的状況であり、医科以上の引き上げが求められる。

医療現場を見ていない人間に、政治決着で診療報酬が決められることは甚だ疑問である。国民の命と健康を簡単に仕分けてもらっては困る。

(副会長 新井 良一)

 

●お問い合わせ ●リンク