HOME » 協会新聞 » 2026年7月号 わたしの主張

 佐賀県は前立腺癌の死亡率(年齢調整死亡率)が全国上位の年が続いていました。テレビCMでPSA検診の啓発活動があったことも記憶に新しいところです。がん情報サービスによると例年は全国1位~7位ですが、2021年と2024年のデータでは24位なので統計上の問題もあるかもしれませんが、死亡率が高い傾向にあることに間違いはありません。
 佐賀県はPSA検診の受診率(暴露率)が低いことが理由ではないかと考えられています。一方で厚労省の研究班は「PSA検診は推奨しない」とし、日本泌尿器科学会の『前立腺がん検診ガイドライン2025年版』では中高年者のPSA検診は「推奨の強さ:弱い」・「エビデンスの確実性(強さ):B」と記載されていて理解に苦しむ部分もあります。
 私は泌尿器科医なので佐賀県の前立腺癌死亡率が高いと言われると何だか責任を感じてしまいます。そこで、実臨床から何が原因で死亡率が高いのかを考えてみました。
 2020年0 2023年までに当院で新規に前立腺癌と診断された296人の患者さんの経緯と特徴を調べてみました。前立腺癌は進行が遅いといわれていますが、診断時すでに転移があったステージ4の症例が41名存在しました。PSA検診や定期的にPSA検査を受けていた患者さんで、診断時から転移があった進行癌の患者さんは3名だけでした。これに対して転移症例で最も多かったのが排尿障害で当院を受診して初めてPSA測定を受けた患者さんで、24名にのぼりました。
 つまり、本来PSA検診を受けるべき人がまだ検査を受けていないことが問題だと考えました。やはりPSA検診の普及活動はまだまだ重要であり、少なくとも排尿に問題がある患者さんには1回はPSAを測定しておくことが大切だと思いました。
 前立腺肥大症や過活動膀胱などの排尿障害は泌尿器科以外の先生方も日常的に治療すると思います。PSAを測定したときに基準値の4・0ng/mLを超えていると、どうすべきか迷うことがあるかもしれません。
 ではわれわれ泌尿器科医が現在何をしているかというと、触診やエコーのほかにMRIやPSA密度(PSA÷前立腺体積)、PSAの変化率、年齢や家族歴、全身状態に加え、新たに保険適応になった補助診断マーカーのphi(プロステートヘルスインデックス)やS2,3PSA%などさまざまなパラメーターを組み合わせて前立腺生検が必要なのかを判断しています。
 特に近年、MRIは診断精度が向上し前立腺生検の適応や方法を決める上で重要な役割を担っています。全てのPSA高値の患者さんに前立腺生検を行って診断や治療を行うのではなく、総合的に考えて、できるだけ臨床的に意義がある前立腺癌を見つけ出し治療するようにしています。
 以上より、今回の私の主張は「排尿障害で加療中の中高年男性患者さんにはPSAを測定し、4・0ng/mLを超えていたら近くの泌尿器科へコンサルトしてください」ということでした。
  (理事 南里 正晴)

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